手動リピート系注文(手動トラリピ)は暴落に強い

リピート系注文とは、一定のルールに基づいてひたすら売買を繰り返すシステムトレードの一種です。そして、その多くは自動取引でしょう。しかし、裁量取引のように、取引のたびに手動で発注することもできます。

そこで、手動ならではのリピート系注文について考察しましょう。ここで紹介する方法を自動化しようと思えば、MT4を使うしかありません。FX各社の自動売買では実行困難です。

手動リピート系注文(手動トラリピ)の手法

ここでは見出しを「手動リピート系注文」としました。しかし、インターネットを検索すると、一般的には「手動トラリピ」と言われているようです。よって、ここでも手動トラリピと書くことにします。

手動でイフダン注文を出し、決済まで終了したら再び同じ注文を出して・・・と繰り返す場合、自動売買と全く同じトレード手法になります。自動売買なら24時間ずっと発注してくれるのに対し、手動だとそうはいきません。

総合評価で自動取引が優位になるでしょう。

そこで、手動トラリピのメリットを生かしたトレード手法をご案内します。例えば「毎日、日足始値で買って、50銭の含み益で決済」という方法です。

価格でなく、時間で取引を管理します。

ポンド/円(GBP/JPY)の値動き

では、このトレード手法にはどんなメリットがあるでしょうか。下のチャートで考えてみましょう。ポンド/円(GBP/JPY)の日足で、期間は2016年6月から7月までです。

ポンド円チャート

上のチャートを見ると、なだらかな円高のように見えます。しかし、とんでもありません。6月初日の為替レートは160円くらいでしたが、7月の初めには130円になっています。わずかな期間で30円(3,000銭)も円高になりました。

6月後半に大きな陰線(黒い線)があります。これが原因です。イギリスで国民投票が実施され、イギリスはEUから離脱することが決まりました。

選挙前から、離脱派と残留派の勢力が均衡していると報道されていました。離脱派優勢と報じられることもありました。しかし、多数の市場関係者は「そうは言っても、結局は残留するだろう」と考えていたようです。

というのは、国民投票実施前1週間の為替レートをご覧いただくと分かりますとおり、円安に振れているからです。離脱の可能性を嫌気して円高で推移してきたものの、土壇場で円安に戻っています。

しかし、ふたを開けてみれば、離脱派の勝利でした。市場はびっくりしてポンドを大いに売った・・・ということです。

下のチャートは、赤の四角を追加したものです。

ポンド円チャート

国民投票前と後で、為替レートの水準が明らかに変わってしまいました。この為替レートで、自動取引のリピート系注文を使って買っていた場合、どのような結果が待っていたでしょうか。

自動売買のリピート系注文をしていた場合

自動売買で買う場合、一定の値幅ごとにどんどん買います。そして、一定の含み益ができれば決済します。このため、上のチャートの左側、赤の四角部分で売買が頻繁に行われたでしょう。

そして、国民投票前に円安で推移しましたから、ポジションがどんどん決済されていきます。赤の四角の範囲内のポジションがほとんどなくなったかな・・・というときに、

ドーン!

一気の円高です。30円ほどの円高が一気に実現しましたが、その際、買い注文も全て約定してしまいました。その後の為替レートは、今までよりも円高で推移しています。すなわち、左側の赤四角部分で発注していた注文はすべて成立し、かつ、全て含み損になっています。

30円という強烈な円高で強制ロスカットにならなかったとしても、含み損はあまりに巨大になっていることでしょう。

手動トラリピのメリット

では、同じチャートで手動トラリピを考えてみましょう。この記事で紹介している手動トラリピは「毎日、日足始値で買って、50銭の含み益で決済」です。

国民投票前、ポンド/円(GBP/JPY)は円高基調で動いていました。利食いを繰り返しながらも、ポジション数は徐々に増えていったことでしょう。そして、国民投票1週間前からの円安で、ポジションは決済されてなくなっています。

そして、国民投票の開票を迎えました。

「今日は大変な日になるかもしれないから、取引はやめよう」と考えたかもしれません。そこで、いつもは日足始値で買っていたのですが、取引を見送ったとしましょう。

国民投票の結果、ドカンと円高になりました。しかし、一つの買い注文も成立していません。それもそのはず、1つも発注していないからです。

仮に、国民投票開票日もいつも通りに買ったとしても、成立した買い注文は1つだけです。自動売買に比べて、含み損の額は極めて少なくて済んだことでしょう。

そして、国民投票終了後、再びいつものように手動トラリピを続けることができます。含み損があったとしても、自動売買ほどに苦しむことはないでしょう。

この例から分かりますとおり、1日1回だけの手動トラリピを実行する場合、「為替が急落して戻ってこない」という重大事態になっても、ダメージを抑えられるというメリットがあります。

手動トラリピのデメリット

では、手動トラリピのデメリットも確認しましょう。それは、「為替レートが1日のうちに何度も上下動する場合でも、利食いは1回しかできない」ということです。

しかし、為替の急変動で大幅損失を計上しないためには仕方ない、と考えることは可能です。

毎日手動で発注しなければならないという面倒さはあります。しかし、これをメリットと感じるかデメリットと感じるかについては、個人差があるでしょう。自分で発注作業をして「トレードしている」という実感を得たいという場合、手動トラリピは悪くない方法です。

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