成功例と失敗例

「ループイフダン実況中」の取引は、なぜ失敗したのか

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リピート系注文に限らず、トレードを学ぶ方法は少なくとも2種類あるでしょう。それは、成功例から学ぶ方法と、失敗例から学ぶ方法です。

アイネット証券は、かつて、ブログ「ループイフダン実況中」でループイフダンを実行していました。そして、損失を計上して取引を終了しました。純資産と口座残高の推移は以下の通りです(アイネット証券ブログ「ループイフダン実況中」から引用)。

この取引はシミュレーションですが、まさに失敗と呼ぶにふさわしいグラフでしょう。そこで、アイネット証券が採用した取引内容を振り返りながら、どこがいけなかったのか?を考察しましょう。

なお、アイネット証券はあえてこの失敗トレードを実行した可能性があります。その理由は最後に考察します。私たちは、この失敗シミュレーションを生かして取引したいです。

アイネット証券の取引設定

「ループイフダン実況中」によるシミュレーションは2014年12月4日に開始されました。終了は2016年6月10日でしたが、この間、同じ取引設定を継続したのではありません。次第に変化しています。

最初にどのような取引を採用したかを確認し、次に、その後の変化を確認しましょう。

最初の取引設定
取引開始: 2014年12月4日
当初資金: 100万円
売買システム: ループイフダンB15_15
通貨ペア: 米ドル/円(USD/JPY)
取引数量: 3,000通貨
最大ポジション数: 制限なし

なお、最大ポジション数につき、現在は設定が必須です。バージョンアップ前のループイフダンは現在と商品性が異なり、最大ポジション数を設定する必要がありませんでした。

すなわち、最大ポジション数を設定しなければ、どれだけ円高になっても新規買いを継続するということです。

さて、最初の取引設定を見て、失敗の理由が何か見えてくるでしょうか。

注目したいのは、B15_15で取引数量が3,000通貨なのに、資金が100万円しかないという点です。B15_15の意味ですが、「15銭ごとに買って、それぞれのポジションは15銭で利食いします」ということです。

では、15銭ごとに3,000通貨買う場合、円高になったらどれくらいの含み損になるでしょうか。試算しましょう。

最も円安のポジションからの円高の大きさと、その時の含み損の額
1.5円(150銭)円高になるとき:△24,750円
3.0円(300銭)円高になるとき:△94,500円
4.5円(450銭)円高になるとき:△209,250円
6.0円(600銭)円高になるとき:△369,000円
7.5円(750銭)円高になるとき:△573,750円
9.0円(900銭)円高になるとき:△823,500円

上の表を見ますと、150銭ずつ円高になるときの含み損の増え方が分かります。最初の150銭の含み損では、2.5万円くらいの損です。最初の資金は100万円でしたから、余裕に感じるかもしれません。

しかし、さらに150銭円高になると、含み損の額は一気に10万円弱まで跳ね上がります。そして、150銭円高になるたびに、含み損の増え方はとても大きくなっていることが分かります。

取引開始後の円高が150銭の場合と900銭の場合を比較すると、円高幅は6倍です。しかし、含み損は33倍にもなっています。

この関係を下のグラフでご覧ください。含み損が一気に増える様子が分かります。

米ドル/円(USD/JPY)の1か月間の値動き

では、米ドル/円(USD/JPY)はどれくらい動くでしょうか。仮に、1か月間の値動きが50銭くらいしかないとしたら、上の試算は大げさかもしれません。と言いますのは、1か月で50銭しか動かないなら、900銭の損になるには連続18か月の円高が必要になるからです。

円高トレンドになっても、18か月も連続で円高になることは想定しづらいでしょう。

一方、1か月で200銭~300銭くらい動く場合は、900銭の円高は数か月で達成可能です。すなわち、この取引設定では簡単に強制ロスカットになりうるということになります。

「ループイフダン実況中」の取引は2014年12月に開始されました。そこで、2014年について、米ドル/円(USD/JPY)の1か月間の値動き(高値と安値の差)を確認しましょう。以下の通りです。

2014年
1月 370銭
2月 210銭
3月 260銭
4月 280銭
5月 220銭
6月 150銭
7月 200銭
8月 280銭
9月 570銭
10月 730銭
11月 640銭
12月 630銭
平均 380銭

1か月の動きの平均値は380銭ですが、最も大きい月で730銭もありました。当時は円安傾向でしたが、相場はいつ反転するか分かりません。すなわち、1か月で730銭の「円高」がやってくる可能性も十分あるということになります。

その状況で、「ループイフダン実況中」は900銭の円高で強制ロスカットになるか?というトレードを開始したことになります。

実際には、すぐに円高になることはありませんでした。このため、取引設定を変更しつつ2016年まで生き延びることができました。しかし、当初の設定で既に、失敗の可能性が比較的高いと予想できたでしょう。

失敗の回避方法

では、この失敗を回避するには、どうすれば良いのでしょうか。

  • 方法1: 15銭ごとに買うのではなく、25銭ごとや50銭ごとにする
  • 方法2: 3,000通貨でなく、1,000通貨で買う

このような方法を採用すれば、円高がやってきても含み損の増え方は穏やかになったでしょう。あるいは、別の方法もあります。

  • 方法3: 損切り(ストップロス)注文を出す

アイネット証券の設定は、円高方向へのリスクが大きいことが分かります。しかし、今後は円安になると読んで取引した可能性があります。この場合は、予想が外れる場合に備えて損切り注文を発注する必要があるでしょう。

でないと、証拠金をほぼすべて失ってしまう可能性があります。すなわち、強制ロスカットです。

「ループイフダン実況中」の絶好調時代

さて、ループイフダンのトレード開始後、しばらくは順調に成績が伸びていきました。グラフをもう一度確認しましょう。

2014年12月に100万円でスタートしましたが、2016年初めの口座残高は180万円を超えるレベルになっています。もうすぐで2倍になるか?という状況です。この間の米ドル/円(USD/JPY)の推移を確認しましょう。日足終値をつなげて作ったラインチャートです。

ループイフダン実況中のシミュレーション取引が絶好調だった時期、実は米ドル/円(USD/JPY)は円安傾向ではありませんでした。ボックス相場(レンジ相場)でした。

リピート系注文は、このようなボックス相場を得意とします。すなわち、為替レートが同じ範囲で上下動するとき、期待通りに成績を伸ばしてくれます。

2014年末から2016年初めまで、米ドル/円(USD/JPY)は116円から125円くらいの間を動いていました。この差はわずか9円です。なのに、口座残高は2倍になろうかという状態でした。

わずか1年と少しで資金が2倍になるかも?・・・これは、リピート系注文の有効性を示しているでしょう。

失敗の種を探す

では、ここで失敗の種があったのかどうかを考察しましょう。「口座残高はしっかり増えているし、どこが失敗なの?」という感じかもしれません。

ここで失敗を挙げるとするならば、「目標を作っていなかった」ということです。為替レートは永遠に円安になることもなければ、永遠にボックス相場になることもありません。どこかで円高になるでしょう。

円高になるとはすなわち、今まで蓄積した利食い額を減らし、やがて損失になることを示します。だったら、どこかで取引を終了したいです。

しかし、「ループイフダン実況中」では、目標金額はなかったようです。取引できる限り、永遠に取引することが目標だったのかもしれません。仮にそうだとするならば、取引設定のリスクがあまりに大きいです。

「取引を終了するための目標や条件を設定していなかった」・・・これが失敗の種だったということです。

「ループイフダン実況中」が取引設定を変更!

ループイフダンが絶好調だった時代、アイネット証券は取引設定を維持していたのかと言えば、変更していました。変更日は2015年5月26日です。

(修正前)ループイフダンB15_15
(修正後)ループイフダンB25_25

すなわち、15銭ごとに買うというシステムから、25銭ごとに買うという内容に変更したのです。その理由について、アイネット証券公式ブログ「ループイフダン実況中」から引用しましょう。

「相場が円高方向に進むと保有するポジションが増加するため、必要とされる資金も多くなります。そういった場合に備えるための手段として、値幅を広いものにすると運用に余裕を持たせることができます。」

すなわち、円高対応が必要だということになります。

では、15銭ごとに買う設定から25銭ごとの設定に変更して、円高対応力はどの程度増加したでしょうか。15銭の値幅で買うときと同様に試算しましょう。

最も円安のポジションからの円高の大きさと、その時の含み損の額
1.5円(150銭)円高になるとき:△15,750円
3.0円(300銭)円高になるとき:△58,500円
4.5円(450銭)円高になるとき:△128,250円
6.0円(600銭)円高になるとき:△225,000円
7.5円(750銭)円高になるとき:△348,750円
9.0円(900銭)円高になるとき:△499,500円

15銭の値幅で買う場合に比べて、円高になるときの含み損の増え方が小さくなりました。グラフで確認しましょう。

下のグラフは、青が15銭の値幅、赤が25銭の値幅です。25銭に修正すると、含み損の増え方が明らかに小さくなっていることが分かります。

では、この修正で良かったのでしょうか。さらに円高が進むと、どれだけ含み損が増加するでしょうか。下のグラフをご覧ください。

「ループイフダン実況中」では、取引を繰り返して証拠金を増やしました。しかし、15円(1,500銭)またはそれ以上の円高になると、再び強制ロスカットの恐怖がやってくることになります。

ここで、1年あたりの米ドル/円(USD/JPY)の値動きを確認しましょう。高値から安値を引いた数字です。

2009年 16円60銭
2010年 14円70銭
2011年 10円00銭
2012年  8円20銭
2013年 18円90銭
2014年 21円10銭
平均:14円90銭

年単位で見て、米ドル/円(USD/JPY)が15円動くというのはごく普通のことです。修正後の設定でも、1年~2年で強制ロスカットになる可能性が否定できません。よって、取引をずっと続けようと思うならば、25銭幅への修正は不十分だったということになります。

「ループイフダン実況中」が、ついに最終章を迎える

そして、とうとう終焉の時を迎えます。もう一度、損益グラフを確認しましょう。

オレンジの線が3回にわたって下方向に一気に動いています。すなわち、損切りして再スタートを切ったということです。

参考までに、損切を繰り返した期間(2016年1月から4月にかけて)の日足チャートを確認しましょう。

米ドル/円の日足チャート

米ドル/円(USD/JPY)は、円高トレンドになっていることが分かります。そして、2016年4月25日には、設定を大幅に変更しました。

(修正前)
ループイフダンB25_25
取引数量:3,000通貨
(修正後)
ループイフダンB50_50
取引数量:1,000通貨

しかし、この修正は遅きに失したということになります。3回の損切りをする時点で、すでに相場に対して後手に回っています。「円高になってツラい → 損切りで設定変更」この繰り返しでは、生きるも死ぬも相場次第ということになります。

円安に転換すれば復活し、円高が続けばさらに傷口が広がるということです。

そこで、取引開始時にもっと安全な設定にするか、あるいは1回目の修正で十分な円高対応をすべきでした。今回は100万円の資金で始めたのですから、最初からB50_50で1,000通貨の取引にしていれば、円高でも耐えることができたでしょう。

「ループイフダン実況中」の取引の意図とは?

では、アイネット証券はなぜこのようなトレードを実行したのでしょうか。そして、なぜこの失敗トレードを公開したのでしょうか。

アイネット証券は、ループイフダンの商品性を熟知しています。そして、円高になったら証拠金がいくら必要かという表を掲示して、ユーザーに周知しています。すなわち、今回の取引設定で円高になったら破産することは、彼ら自身が知っていたということになります。

また、円高になった後の対応を見ても、今の円高に耐えられる設定にしようという行動に出ており、さらに円高になったときのための設定という視点が弱いです。過去の値動きを検証した形跡も見られません。

これは、アイネット証券が私たちに発している警告でしょう。買いのループイフダンで取引する場合、円安やボックス相場のときには順調に資産が増えますが、円高になると、あっという間に負ける可能性があるよ!と言っているのです。

円高になっても破産しないためには、取引数量を十分に小さくしたり、値幅を広くとったりする必要があるでしょう。

私たちは、アイネット証券のシミュレーション取引のデータを分析して、同じ失敗をしないようにしたいです。

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