長期のリピート系注文の考え方や取引方法を確認したら、取引を開始したくなるでしょう。しかし、取引を始める前に、どのような損益推移になると予想できるか、知っておいた方が良いです。というのは、長期リピート系注文の損益推移は独特な形状だからです。
そこで、損益推移のシミュレーションをしてみましょう。
目次(もくじ)
右肩上がりの損益曲線になりづらい
トレードを始めるとき、極端な話、私たちは下のグラフのような損益曲線を期待してしまいます。すなわち、一直線に右肩上がりで資金が増えていく状態です。
しかし残念ながら、スーパートレーダーでもこうならないでしょう。トレードで最終的に成功する場合でも、利食いしたり損切りしたりしながら、徐々に右肩上がりになっていきます。
では、長期のリピート系注文の損益曲線は、どのようになるでしょうか。数年以上稼働させることを想定して考えてみましょう。
運用成績の考察方法
損益曲線を考える際、2つに分けて考える必要があります。
- 利食いとスワップポイント
- 評価損益
というのは、上の2つは極めて異なる動きをするからです。そして、この二つのバランスがとても悪くなるとき、強制ロスカットの恐怖がやってくることになります。
そこで、両者を分けて考察し、強制ロスカットの失敗を回避できるようにします。
利食いとスワップポイントの損益曲線
最初に、利食いとスワップポイントの損益曲線の様子を考察しましょう。豪ドル/円(AUD/JPY)やNZドル/円(NZD/JPY)など、スワップポイントが長期的にプラスになる場合を例にします。
利食いとスワップポイントの合計額は、一直線にとはいきませんが、右肩上がりの損益グラフになることが分かります。というのは、以下の理由によります。
利食い:
利食いとはすなわち利益確定なので、常にプラスとなる。
スワップポイント:
スワップポイントがプラスの通貨ペアで取引するので、毎日プラスになる。
利食いもスワップポイントもプラスなので、合計すると、やはりプラスになります。一気に数多くの利食いができる場合、グラフの傾きは大きくなります。逆に、利食い頻度が小さいと、傾きは緩やかになります。
そして、このグラフの特徴は、「利食いを続ける限り、そしてスワップポイントがプラスである限り、グラフは継続的に右肩上がりになる」ことです。
今日、1,000円獲得したとします。明日も1,000円獲得したとします。合計で2,000円の収益です。収益はどんどん積みあがっていきます。損切りしない限り、積み重なった収益が減ることはありません。
次の評価損益のグラフを考えるとき、この「積み重ね」「蓄積」が重要なキーワードになります。
評価損益のグラフ
次に、評価損益のグラフを考察しましょう。イメージは下の通りです。
買いのリピート系注文をする場合、為替レートが円高になれば含み損が増えます。逆に、円安になれば含み損が減少します。この動きで、特徴が二つあります。順に確認しましょう。
含み益はわずかである
取引設定にもよりますが、評価損益のグラフについては、含み益はほとんど出ません。この理由を、下のチャートで確認しましょう。黒の曲線は為替レートの動き、赤の破線は注文を出している位置です。
青丸1、2、3で買い注文が成立しました。その後、為替レートは点Aを通って円安に戻ります。この過程で、買いポジションは利食いされて消えていきます。点Bに至って1の買いポジションが決済されますと、ポジションは全くなくなります。
すなわち、含み益はゼロとなります。
含み益を大きくしようと思えば、円高の時に買って、円安になっても売らないで保有を続ける必要があります。しかし、リピート系注文の基本形は、「少しの含み益で決済」です。このため、含み益になりづらいトレード手法です。
しかし、含み益の代わりに利食いできるので、全く問題ありません。
含み益の場合、その後円高になると、利益が消えてなくなってしまいます。しかし、利食いで得た資金の場合は、その後円高になっても消えません。この点で、利益確定は含み益よりも価値が高いと言えます。
含み損は蓄積しない
「含み損は蓄積しない」の意味ですが、上で使ったチャートをもう一度見てみましょう。
為替レートが点Aに位置するとき、3つのポジションは全て評価損です。そして、円安になると、含み損は徐々に減っていきます。
含み損は永遠に残り続けるのではありません。為替相場が円安になれば、きれいさっぱりなくなります。これが、利食いやスワップポイントとの違いです。どれだけ円高になって含み損が厳しくなっても、円安に反転すれば、含み損は消えます。蓄積しません。
長期リピート系注文の損益グラフ
長期リピート系注文は、上で考察しました「利食いとスワップポイント」そして「評価損益」の合計で損益グラフが作られます。下はイメージ図です。
右肩上がりなのは、利食いとスワップポイントの合計です。オレンジの曲線は、評価損益のグラフです。AとBの大きさがありますが、これを合計してプラスならば、トータルでも損益がプラスになるということになります。
BがAよりも大きい状況になると、合計でも損失になります。
ということは、私たちは、常にAがBよりも大きい状態にできればOKです。そのような状態にできるでしょうか。
特に取引開始当初は、含み損を覚悟
ここで、一つ残念な情報があります。それは、利食いとスワップポイント合計額の増加スピードはゆっくりですが、評価損は一気に増える可能性があるということです。
これを分かりやすく考えるために、豪ドル/円(AUD/JPY)の長期チャートを確認しましょう。
チャートの中ほど、2008年で一気に円高になっています。リーマンショックがあったときです。為替レートが激しく乱高下しましたので、数多くの利食いが成立しました。しかし、あまりに円高のスピードが速いです。
円高になるたびに新規買い注文が成立しますから、含み損が一気に増えます。利食いを繰り返しても、追いつけません。その結果、評価損が一気に大きくなります。
2008年のリーマンショックのような極端な例でなくても、1997年からの円高、2015年からの円高でも同様です。取引設定によって変わってきますが、一般的には、含み損増加スピードの方が速いです。
そこで、取引開始からしばらくは、含み損の方が一時的に大きくなる事態を覚悟しなければならないでしょう。
しかし、長期的に見れば、損益合計でプラスになると期待できます。なぜなら、今まで考察してきた内容の通りです。
- 利食い額とスワップポイントの合計:どんどん蓄積する
- 評価損:蓄積しない
評価損は一過性ですが、利食い額は蓄積します。これが重要です。そこで、予想される評価損の最大値以上に証拠金を入金して、あとはひたすら利食いを繰り返します。こうすれば、強制ロスカットの心配がなくなります。
あとは、取引が繰り返されるのを待ちましょう。時間はかかるでしょうが、当初の入金額を引き出しても大丈夫なほどに、証拠金が増えることを期待して継続的に取引します。