ユーロ圏は、PIIGS問題(注)、ギリシャ債務危機、中東からの難民問題、イギリスのEU離脱問題など、問題に事欠かない状況が続きました。
(注)PIIGS問題:ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの財政問題
情勢が不安定ということは、為替レートの値動きが大きいと予想できます。リピート系注文にとって、値動きが大きいこと自体は歓迎です。しかし、この状況は心配でもあります。
そこで、ユーロ/円(EUR/JPY)の値動きについて確認しましょう。
目次(もくじ)
ユーロ/円(EUR/JPY)の長期チャート
最初に、ユーロ/円(EUR/JPY)の長期チャートを確認しましょう。2011年1月~2016年12月です(調査期間について、以下同じ)。
2011年から2012年にかけて円高、その後2014年初めにかけて円安になりました。2014年から2015年にかけて、緩やかな円高になりつつもボックス相場(レンジ相場)を形成しました。そして、2015年からは円高が明らかになりつつも、2016年末にかけて大きく上昇しました。
ユーロ圏にとって、良くないニュースが続きました。しかし、ユーロ/円(EUR/JPY)の水準は2013年以降100円割れに至らず、110円台で踏みとどまっています。
ユーロ/円(EUR/JPY)の1日の値動きの大きさ
では、ユーロ/円(EUR/JPY)の1日当たりの値動きの大きさを確認しましょう。値動きの大きさとして、日足の高値から安値を引いた数字を使っています。下のグラフは、年ごとにまとめたものです。
こうしてグラフを見ますと、2014年に100銭くらいとなっているのが最低の数字で、その他は120銭を概ね超えていることが分かります。6年間の平均で130銭弱です。
ということは、リピート系注文で100銭ごとに買い注文(または売り注文)を出すならば、平均的には週に何回かは約定すると期待できるでしょう。毎日のように約定させたいならば、もっと小さな注文値幅を採用することになります。
しかし、波乱のニュースが飛び込んでくるようですと、100銭という値幅でも1日のうちに何回も約定できるかもしれません。値動きの平均が130銭弱というのは、そういう数字です。
ユーロ/円(EUR/JPY)の年間高低差
では次に、1日ではなく1年間の値動きの大きさを確認しましょう。年間高値から年間安値を引いた数字です。
15円~35円くらいの間でしょうか。この数字をどのように評価してよいのか、難しいかもしれません。危機が連続した割には動かなかったといえるかもしれませんし、不安定な状況が続いたから大きな値動きが続いたともいえるでしょう。
いずれにしても、1年間で20円くらいは為替レートが移動すると考えて取引する必要があります。
すなわち、長期のリピート系注文を発注する場合、「20円の円高になっても強制ロスカットにならない設定にしたから大丈夫」と考えるのは危険です。平均的には1年間で20円以上動くのですから、その程度では簡単にロスカットになってしまうかもしれません。
少なくとも、2013年の値動きである30円以上動いても大丈夫という設定にする必要があるでしょう。
ユーロ/円(EUR/JPY)のヒストリカル・ボラティリティ
では最後に、ヒストリカル・ボラティリティを確認しましょう。
ヒストリカル・ボラティリティとは、過去の為替データ(ヒストリカルデータ)を用いて、価格の変化のしやすさを数字で表現したものです。ボラティリティとは「変動率」という意味です。
上のグラフを見ますと、2014年以外は10%を超えていることが分かります。
この10%の意味ですが、「今後1年間の価格が現在値の±10%に収まる可能性は、68.3%である」という意味です(ヒストリカル・ボラティリティは過去データの分析なので、「今後1年間」と書くのは無理があります。しかし、参考値として将来の予想で使えるでしょう)。
ヒストリカル・ボラティリティの数字が大きいということは、為替レートの変動が大きくなることを示唆しています。すなわち、リピート系注文にとっては都合が良いということになります。
ユーロ/円(EUR/JPY)はスワップポイントの状況が不安定ですが、リピート系注文をする際の選択として考えるのは可能でしょう。